<防ぐために知ることから 「感染」のメカニズム②>
前回お伝えした通り、あらゆるところに存在する病原体はさまざまな経路から人の体に侵入し、害を及ぼします。完璧に防ぐことは難しくても侵入ルートを知ることである程度の対策を立てることができます。前回の「接触感染」に引き続き、今回は「飛沫感染」と「空気感染」についてご紹介。対策を立てる際にお役立てください。
※こちらのコンテンツの内容は2019年4月時点の情報です。
結核、風しん、麻しん、「過去の病気」が、ふたたび流行中
かつて猛威をふるっていた「結核」や「風しん」「麻しん(はしか)」。一時は収まっていた感染のニュースが、最近再び報じられ話題になっています。その背景にはさまざまな理由がありますが、これらが「飛沫感染」「空気感染」でうつる感染症であることも原因のひとつと見られます。感染症が事業所内で大流行、なんてことにならないためにも今一度考えてみましょう。
今話題の感染症トピックス!
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結核
[症状]
咳、痰、発熱、呼吸困難など
[潜伏期間] 数ヵ月~数十年 -
結核に感染した場合、咳や痰、発熱など風邪のような症状が出て長く続きます。潜伏期間が数ヵ月~数十年と症状が出ない場合も。一時は流行は収まりましたが、現在でも国内で年間約17,000人が発症し、約2,000人が命を落としています。※結核の感染者は高齢者が多く、結核患者として登録される方の約6割が70歳以上。結核が流行した時代に感染したが潜伏期間が長く、今になり発症したからと考えられます。
※2018年9月の情報です。
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風しん
[症状]
発熱、発疹、リンパ節腫脹
[潜伏期間] 14~21日 -
感染してから約2~3週間後に発熱、発疹、リンパ節の腫れといった症状が現れる風しん。感染力が強く1人の感染者から5~7人(免疫のない方)にうつすと言われています。年代によってはワクチン接種を受けていないあるいは1回のみの方もおり、近年免疫力がない方を中心に流行中。妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群※を発症する可能性が高くなるので注意が必要です。
※心疾患、白内障、難聴、発育遅延などを引き起こします。
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麻しん(はしか)
[症状]
高熱、発疹、咳、鼻水、目の充血など
[潜伏期間] 10~12日 - 感染してから約10日後に風邪のような症状に。その後39℃以上の高熱と全身に発疹が現れます。近年では海外から持ち込まれたウイルスにより、国内で流行中。麻しんは感染力が非常に強く、1人の感染者から12~14人(免疫のない方)にうつすと言われています。ワクチン接種を受けていない、あるいは1回しか受けていない免疫力がない方は高い確率で感染します。
「飛沫感染」と「空気感染」のルートを探る
飛沫感染のしくみ
感染者が咳やくしゃみをした際に飛び散る病原体を多く含むしぶきを、近くにいる人が吸い込んでしまうことにより感染するのが飛沫感染です。
空気感染のしくみ
それらのしぶきが乾燥し、病原体が飛沫核として空気中を漂うこともあります。それを吸い込んでしまうことにより感染するのが空気感染です。
感染症豆知識!
「すぐに落下する病原体」と「空気中を漂う病原体」の違いは?
ズバリその答えは、粒子の大きさ。咳やくしゃみをした際に出る飛沫(唾液や鼻水など)はすぐに落下します。しかし、飛沫が乾燥した空気にさらされると水分が蒸発して、微粒子のみ(飛沫核)となり空気中を漂います。冬は特に乾燥するので感染症が蔓延しやすいのです。
病原体を拡散させない・減らす。それがリスク抑制の考え方
最後に、「飛沫感染」「空気感染」のリスクを抑えるための考え方をご紹介します。ぜひ、こちらを参考にして、感染対策に取り組んでみてください。
対策をしない場合、もしかしたらこんなことに!
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スタッフだけでなく、
大切なお客様にも
うつす可能性が… -
店内・社内で流行し、
日々の業務に支障が
出ることに… -
教育施設では、
流行すると、
学級閉鎖に…
感染リスク抑制のためにマスクを着けて、 病原体を拡散させない
感染対策としてマスクに期待することは、「予防」と「うつさないこと」の2つ。「予防」に関しては飛沫は防げますが、ウイルス単体の大きさはマスクの目よりも小さいことから、効果は期待できないという見方が一般的。一方、「うつさないこと」に関しては、厚生労働省が「咳エチケット」を啓発していることからもわかる通り、有効な対策といえるでしょう。
ご存じですか?咳エチケット
咳エチケットとは、厚生労働省が啓発している感染症を人にうつさないためのエチケット。マスクの着用や、咳をする際にティッシュ・ハンカチ・上着の内側・袖などで口や鼻を覆うことを推奨しています。
お客様やスタッフにうつさないために マスクを正しくつけましょう
マスク使用の際の注意ポイント
マスクは1日1枚使い切りで
1枚の使い捨てマスクを何日も使いまわすことは厳禁。1日1枚を目安に交換して使用しましょう。
フィルター部分に触れない
フィルターには病原体が付着している可能性が。マスクを着脱する際は耳付近のゴムを持ちましょう。
むやみに着脱しない
一時的にマスクを外す場合は病原体をほかの箇所に付着させないように保管しましょう。
マスクに触れたら手を洗う
マスクに触れると付着した病原体が手にうつる可能性がありますので、マスクに触れたらしっかりと手を洗いましょう。
使い終わったらすぐ捨てる
使用済みのマスクはすぐにゴミ箱へ。その後はしっかりと手を洗いましょう。
感染リスク抑制のために換気を行い、 室内の病原体を減らす
換気をすることで、新鮮な空気を取り込み、室内に漂う病原体を外に出すのも効果的。「回数・タイミング」など、お店や施設でルールを決めて、換気の徹底を図りましょう。
効率的な換気の方法
- ●窓あるいはドアを2ヵ所開ける
- ●開ける窓あるいはドアは対角線上に
こうすることで、空気の入り口と出口ができ、効率の良い空気の通り道をつくることができます。
※換気は、風向きや窓の位置を考慮して行いましょう。
感染リスクを抑制するその他の方法
日々の手洗い
手洗いは感染対策の基本中の基本。手を介して感染するケース(接触感染)もあるので、手洗いは自分が感染症にならないためということに加え、感染拡大を抑えるためにも効果的です。
日々のうがい
うがいはお口の中を洗浄するだけでなく、のどの粘膜の防御機能を高めることにもつながります。うがい薬を使用すればお口の中の殺菌もできます。
湿度管理
空気が乾燥する時期などはウイルスが活発に。ウイルスの力を弱めるためにも適切な湿度(50%~60%)に調整しましょう。また、飛沫を乾燥させにくくする、のどの粘膜機能を回復させるといった効果もあります。
健康的な生活
栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠など、規則正しい生活をこころがけ、抵抗力を高めておくことも感染対策のひとつです。