ビジネスコラム今すぐ役立つ! 目からウロコの情報を掲載!

中小企業の経営戦略を担う「船井総研」のコンサルタントが、さまざまな業種・業態の方向けに書き下ろしたコラムを掲載!

117

【飲食店店長が取り組むべき繁忙期対策~売上向上と安全性を確保するための方法~】

コラムをご覧の皆様、こんにちは。
株式会社船井総合研究所 地方創生支援部の大橋隆人(おおはし たかひと)です。

飲食店にとって年末年始の繁忙期は一年で最も忙しい期間であり、売上を最大化するための重要なチャンスです。しかし、繁忙期を乗り越えるためには事前の準備と効率的な運営、さらには安全面での管理が必要です。特に繁忙期には食中毒のリスクも高まるため、衛生管理を徹底することが欠かせません。
今回は、飲食店店長が取り組むべき繁忙期対策について、売上向上と安全性の観点から対策をお伝えします。
【飲食店店長が取り組むべき繁忙期対策~売上向上と安全性を確保するための方法~】
=今回のポイント=
■ 繁忙期に備えた準備
■ 繁忙期に向けた効果的な販促施策
■ 食中毒対策を徹底する
■ お客様対応とサービス向上
■ 繁忙期終了後のアフターフォローとリピート促進
=========
■ 繁忙期に備えた準備
繁忙期には多くのお客様が来店される見込みがあるため、通常以上に効率的な運営が求められます。そのためには、過去の売上データを基に、繁忙期の客数や売上を予測し、それに合わせて必要な準備を整えることが重要です。

〇過去のデータを活用した予測
まず、繁忙期に向けて過去のデータを分析し、いつ、どれだけの集客が見込めるかを把握しましょう。忘年会や新年会シーズンである年末年始の時期には客数が増えることが予想されます。また、客数獲得に向けたイベントや販促内容から、予測される集客数を考慮し、食材仕入れやシフト組みをおこなっていきましょう。

〇スタッフのシフト調整とトレーニング
繁忙期でしっかりと売上を作っていくためには、適切なシフト管理が欠かせません。必要な人員を確保するために、早め早めにシフト調整を行いましょう。また、特に新人スタッフについては、繁忙期までに接客スキルやオペレーションの基本をしっかりと教え込み、忙しい状況でもスムーズに業務をこなせるよう研修の時間を確保しましょう。
繁忙期は通常時に比べ作業が多く、より効率的な動きが求められます。一方で、サービスの質が低下しがちな時期でもあります。繁忙期は新規客獲得の場でもありますので、リピートにつなげるためにも、忙しくても適切なサービスを行えるような研修をしておく必要があります。効率的な作業マニュアルと接客マニュアルを作成し、スタッフへの落とし込みを行いましょう。
■ 繁忙期に向けた効果的な販促施策
繁忙期に売上を最大化するためには、事前のマーケティング施策が不可欠です。ターゲット顧客に対する効果的なプロモーションを通じて集客力を高める方法を紹介します。

〇SNSを活用したキャンペーン
昨今のSNSによる飲食店集客は、言うまでもなく効果が出ている販促手法のひとつです。繁忙期に向けてSNS上での露出を増やし、特別なキャンペーンや限定メニューを告知しましょう。また、まだSNS活用に取り組んでいない場合や、アカウントのフォロワー数が少ない場合は、フォロワー獲得に向けてアカウントの強化を実施しましょう。
特にInstagramでは料理の写真や動画を使って視覚的にアピールし、予約や来店を促す投稿を行うと効果的です。また、ストーリー機能を活用してリアルタイムで店舗の様子を発信することで空席率を減らすことができますし、フォロワーに対して限定クーポンを提供することで集客力をさらに強化できます。

〇早期予約特典とテイクアウトの強化
繁忙期には早めの予約が売上安定に繋がります。これにより、ある程度の客数や売上予測も立ちます。予約を促進するために、早期予約特典を用意しましょう。例えば「早期予約でドリンク一杯無料」や「ディナーコース10%オフ」といった特典です。
また、繁忙期にはテイクアウトやデリバリー需要が高まるため、これらのサービスを強化することも重要です。専用のメニューを用意したり、繁忙期限定のファミリー向けセットを提供することで売上の多角化を図ります。テイクアウト容器の在庫は十分でしょうか。この機会に確認しましょう。このほか、デリバリー対応可能なエリアを拡大することも売上拡大に寄与します。
■ 食中毒対策を徹底する
繁忙期には厨房が忙しくなるため、衛生管理が疎かになりがちです。もしも食中毒が発生すれば店舗は信用を失い、売上に大きな打撃を与えます。食中毒予防対策は必ず徹底しましょう。

〇食材の管理と保存方法の徹底
食材の管理は食中毒予防対策の基本です。特に繁忙期には大量の食材を扱うことが多いため、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理を徹底し、食材が適切に保存されているか確認しましょう。温度管理が不十分な場合、食材が腐敗し、食中毒リスクが高まります。
また、使用する食材の期限を厳しくチェックし、消費期限が切れたものを使用しないように徹底することが重要です。食材を管理するためのシステムを導入し、スタッフが常に最新の在庫情報を把握できるようにすると衛生管理が一層強化されます。

〇調理器具と手指の衛生管理
調理器具やスタッフの手指の衛生管理も重要です。繁忙期はスタッフが忙しく、手洗いが疎かになることがありますが、これが食中毒の原因となり得ます。スタッフ全員に対して定期的な手洗いや消毒の重要性を再教育し、衛生管理を徹底しましょう。
また、調理器具も使用後に必ず洗浄・消毒し、清潔な状態を保つようにします。特に生肉や魚介類を扱う器具は他の食材と交差汚染が起こらないよう、別の器具を使用することが推奨されます。

〇キッチンの清掃と衛生管理
繁忙期は厨房内が混雑しやすく、汚れやゴミが溜まりやすくなります。定期的な清掃スケジュールを設け、厨房の衛生状態を保つことが重要です。これらは衛生管理をサポートするサービスやツールを活用することも有効です。
ダスキンが提供する「厨房衛生マネジメントサービス」では、ATP清浄度検査や菌検査により現状の問題点を正確に把握できます。さらに、衛生報告書をもとに問題点を改善するためのアドバイスや提案サポートを受けられるため、効果的な衛生管理と食中毒予防対策ができます。このほか定期清掃や害虫駆除サービスなどを併せて活用することで、店舗の衛生管理の維持に必要な「把握・改善・維持」の3つの要素をしっかりとサポートしてくれます。
■ お客様対応とサービス向上
繁忙期には多くのお客様が来店するため、サービスの質を維持することが難しくなります。接客が雑になると顧客満足度が低下し、リピート率にも影響を及ぼすため注意が必要です。

〇スタッフの役割分担とスムーズな接客
繁忙期において、接客のスムーズさはお客様の満足度に大きく影響します。冒頭でお伝えした「繁忙期に備えた準備」の「スタッフのシフト調整とトレーニング」にも繋がる部分です。ここで重要なのは、スタッフの役割分担を明確にし、効率的な接客体制を構築することです。例えば、オーダーを取るスタッフ、料理を運ぶスタッフ、テーブルの片付けや清掃を行うスタッフなど、業務ごとに担当を分けることで全体の動きがスムーズになります。
特に繁忙時には一時的に業務が混乱することがありますが、こうした分担を予め明確にしておくことで混乱を最小限に抑えることができます。シフト開始前に簡単なミーティングを行い、当日の役割分担を確認することも効果的です。また、突発的な問題が発生した場合には、迅速に対応できるようにリーダーを設け、スタッフが迷わず指示を仰げる体制を整えておくことも大切です。

〇クレーム対応の強化
繁忙期には、どうしてもクレームの発生率が高くなりがちです。料理の提供が遅れたり、予約がうまく管理されていなかったりすると、お客様の不満感は高まります。もちろんクレームを出さないように準備や対策をしておくことが一番ですが、起きてしまった際の準備もおこなっておく必要があります。
クレーム対応のポイントは、まずはしっかりと謝罪をしたうえで、お客様の話に耳を傾けることです。状況として、お客様は何にお怒りで、何を求めているのかを的確に把握し、真摯な対応ができるようスタッフ育成をしておきましょう。また、クレームが発生した原因をスタッフ間で共有し、今後同じ問題が起こらないようにするための改善策を講じることも忘れてはいけません。
例えば、料理が提供されるまでに時間がかかりクレームとなった場合、次回の来店時に使える割引クーポンを提供するなどのフォローアップを徹底することで、お客様の不満を和らげることができます。繁忙期においてはクレーム対応がその後のリピート率にも影響するため、丁寧な対応を心掛けましょう。

〇顧客満足度を高めるためのサプライズ
繁忙期にはサービスの質が多少低下してしまう点をお客様にも理解いただける場合が多いですが、それでも顧客満足度を高めるための工夫は欠かせません。例えば、小さなサプライズや心配りで印象を変えることができます。具体的には、お会計時に次回使えるクーポンを渡す、誕生日のお客様にささやかなデザートを提供するなどのサービスは、コストを抑えながらも顧客満足度を向上させることができます。
また、SNSでのシェアを促進するためのフォトジェニックなデコレーションや、お客様のテーブルで料理を完成させるなどの特別な演出を取り入れることで、繁忙期でも特別感を提供することができます。
■ 繁忙期終了後のアフターフォローとリピート促進
繁忙期が終わった後も、アフターフォローを徹底することで次の繁忙期に向けたリピート顧客の獲得ができます。ここでは繁忙期後に実施すべき施策を紹介します。

〇顧客データの活用とリピート促進
繁忙期には多くのお客様が来店するため、顧客データを収集する絶好の機会です。例えば、会計時にお客様のメールアドレスやSNSアカウントを取得し、後日フォローアップメールを送信することでリピートを促進できます。
フォローアップメールでは「ご来店ありがとうございました」といった感謝のメッセージに加え、次回来店時に使える特典を付けることで、顧客に再訪を促す効果があります。また、繁忙期後の閑散期にはリピーター向けの特別割引や限定メニューを提供し、再来店を促すキャンペーンを実施すると良いでしょう。この部分は次回、詳しくお伝えします。

〇SNSでのリピーター向けキャンペーン
SNSは繁忙期だけでなく、オフシーズンにも活用できる重要なツールです。繁忙期に来店したお客様に対してSNSでのフォローを促し、オフシーズンに特別なキャンペーン情報やクーポンを提供することで、リピーターとしての関係を築くことができます。
一例として、「フォロワー限定キャンペーン」として来店時にSNSアカウントを提示すると割引が適用される仕組みの導入や、SNS上での投稿に対してポイントを付与するなどの仕組みの活用です。これにより、顧客との接点を維持し、繁忙期以外でも安定した集客が見込めるようになります。

〇定期的なメニューやサービスの改善
繁忙期が終わった後は、得られたフィードバックやデータを基に、メニューやサービスの改善を行うことが重要です。繁忙期に特に人気があったメニューや、不満が寄せられた点を分析し、次の繁忙期に向けての改良を行いましょう。
もしも提供スピードに関する問題が発生していた場合、キッチン内の動線や調理プロセスを見直し、オペレーションを効率化することが必要です。また、繁忙期に試験的に導入した限定メニューが好評だった場合、それを通常メニューに加えるなどの工夫も良いでしょう。

今回ご紹介した具体的な施策を実践することは、繁忙期を乗り越えるだけでなく、店舗の成長と顧客満足度の向上に繋がります。ぜひ取り組んでみてください。

次回は、飲食店店長が取り組むべき閑散期対策についてお伝えします。

▼関連コラム
【2024年版 これからの店舗運営のポイント】
https://biz.duskin.jp/biz/b_column/index_109.html
【スタッフの即戦力で効率的なオペレーションを実現する方法】
https://biz.duskin.jp/biz/b_column/index_103.html
◆執筆者プロフィール◆
株式会社船井総合研究所 地方創生支援部 観光フードグループ
大橋 隆人(おおはし・たかひと)
大学卒業後、船井総合研究所に新卒入社。飲食企業を実家に持つ。
事例主義を掲げ、居酒屋店、焼肉店、総合和食店など、さまざまな業態の飲食店のコンサルティングに携わる。直近では、観光立地での飲食店業態開発にも力を入れており、現場に寄り添うサポートをおこなっている。
【株式会社船井総合研究所】
国内最大級の経営コンサルティング会社の「フードビジネス専門サイト」
https://food-business.funaisoken.co.jp/

(公開日 2024年12月16日)

前のコラムへ前のコラムへ
バックナンバーはこちらバックナンバーはこちら

ページのトップへ

カタログ申込み WEBでのお問い合わせ
商品・サービス その他のお問い合わせ 0120-100100 (フリーダイヤル/8時〜20時・年中無休)

ページTOPへ