中小企業の経営戦略を担う「船井総研」のコンサルタントが、さまざまな業種・業態の方向けに書き下ろしたコラムを掲載!
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効果的に人材育成を行う方法① ~新人育成編~
コラムをご覧の皆様、こんにちは。
株式会社船井総合研究所 地方創生支援部の光永春華(みつなが はるか)です。
今回は、効果的に人材育成を行う方法と題して、特に「新人育成」に特化した内容でお伝えします。
株式会社船井総合研究所 地方創生支援部の光永春華(みつなが はるか)です。
今回は、効果的に人材育成を行う方法と題して、特に「新人育成」に特化した内容でお伝えします。

=今回のポイント=
■ 放置したらもったいない!新人育成の重要性
■ 新人の育成スピードの上げ方
■ 新人育成の際にするべきおすすめの取り組み
■ AIを活用した新人教育
=========
■ 放置したらもったいない!新人育成の重要性
■ 新人の育成スピードの上げ方
■ 新人育成の際にするべきおすすめの取り組み
■ AIを活用した新人教育
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■ 放置したらもったいない!新人育成の重要性
昨今、働き手不足は深刻化しており、特に人の入れ替わりが激しい飲食業界では慢性的な人手不足に悩まされています。では、なぜ人手不足に陥るのでしょうか?その要因の一つとして、新人スタッフがすぐに辞めてしまうことが挙げられます。
一般的に辞める原因になりやすい要素としては「充分な仕事のレクチャーをしてもらえない・ケアをしてもらえない」点があります。また、毎回シフトインするたびに教えてもらうが、先輩スタッフによって対応が違うといったような不安要素が原因となるケースもあります。
新人スタッフが辞めてしまうとこれまでに採用や新人教育にかけたコストが無駄になるうえに、新たなスタッフの募集をしなければならず、結果的に仕事が増えてしまいます。そのため新人スタッフの育成は力を入れたい業務の一つでもあります。新人スタッフが育てば店舗全体の業務スピードが上がり、売上の増加にも寄与します。
近年の飲食業界では、採用媒体に募集をかけると費用が掛かるため、既存スタッフの紹介で人員を募集するというケースも増えています。その際は、紹介したスタッフに5,000円、スタッフとして新たに入ってくれた方に5,000円といったように、謝礼を用意して促進するケースもあります。
私たちのお客様の中にも紹介制度を実施している店舗がありますが、既存スタッフの紹介であるため、しっかり業務をこなし、長く働いてくれる質の高い人材が集まりやすい傾向にあります。一見、費用がかかるように感じる紹介制度も、その後のスタッフの定着率や質の高さを考えると費用対効果は抜群です。
昨今、働き手不足は深刻化しており、特に人の入れ替わりが激しい飲食業界では慢性的な人手不足に悩まされています。では、なぜ人手不足に陥るのでしょうか?その要因の一つとして、新人スタッフがすぐに辞めてしまうことが挙げられます。
一般的に辞める原因になりやすい要素としては「充分な仕事のレクチャーをしてもらえない・ケアをしてもらえない」点があります。また、毎回シフトインするたびに教えてもらうが、先輩スタッフによって対応が違うといったような不安要素が原因となるケースもあります。
新人スタッフが辞めてしまうとこれまでに採用や新人教育にかけたコストが無駄になるうえに、新たなスタッフの募集をしなければならず、結果的に仕事が増えてしまいます。そのため新人スタッフの育成は力を入れたい業務の一つでもあります。新人スタッフが育てば店舗全体の業務スピードが上がり、売上の増加にも寄与します。
近年の飲食業界では、採用媒体に募集をかけると費用が掛かるため、既存スタッフの紹介で人員を募集するというケースも増えています。その際は、紹介したスタッフに5,000円、スタッフとして新たに入ってくれた方に5,000円といったように、謝礼を用意して促進するケースもあります。
私たちのお客様の中にも紹介制度を実施している店舗がありますが、既存スタッフの紹介であるため、しっかり業務をこなし、長く働いてくれる質の高い人材が集まりやすい傾向にあります。一見、費用がかかるように感じる紹介制度も、その後のスタッフの定着率や質の高さを考えると費用対効果は抜群です。
■ 新人の育成スピードの上げ方
新人育成の重要性をお伝えしましたが、具体的にどのような点に注意して教育するべきかわからない場合もあるかと思います。ここからは新人育成をする上でのコツをご紹介いたします。
まず大前提として「段階を踏んで教えること」が大切です。新人スタッフにいきなり大量の業務を与えて負担をかけてしまうと退職の原因の一つになってしまいます。特に新人のうちは日常生活を過ごしていればできそうなことを最初の業務としましょう。
例えば、キッチンスタッフであれば皿洗いや、サラダとして使うレタスをひと口サイズにちぎるなど、すぐにできる簡単な業務から任せましょう。ホールスタッフの場合も皿洗いや店内清掃といった業務から始めると良いです。
例えばお客様がお店を選ぶ際、トイレの綺麗さを考慮して決めるといった方も一定層いるため、新人教育の入り口としてトイレ掃除をレクチャーすることで、お店全体の顧客満足度を高めることができます。また、トイレ掃除をした後に記名するフローにすることで新人スタッフの責任感も生まれ、達成感を得やすくなります。しかし、スタッフの中には清潔感のない掃除用具、特にトイレまわりの用具には触りたくないといった人もいるかもしれません。特に衛生面が気になるトイレの清掃用具は、消臭・抗菌加工がされており、定期的に交換されるレンタルモップを活用するなどの工夫をすると、手軽に働きやすい環境づくりができます。
例えばダスキンの「化粧室・トイレ用モップ」であればモップ使用後の水洗いが不要で、通気性のよい場所に吊るしておくだけという手軽さです。最近ではトイレ清掃に特化したスプレータイプのマルチクリーナーなども出ており、これらとセットで使えば面倒な準備・水洗い・二度拭きも不要になり、より清掃時間が短縮できます。
新人育成の重要性をお伝えしましたが、具体的にどのような点に注意して教育するべきかわからない場合もあるかと思います。ここからは新人育成をする上でのコツをご紹介いたします。
まず大前提として「段階を踏んで教えること」が大切です。新人スタッフにいきなり大量の業務を与えて負担をかけてしまうと退職の原因の一つになってしまいます。特に新人のうちは日常生活を過ごしていればできそうなことを最初の業務としましょう。
例えば、キッチンスタッフであれば皿洗いや、サラダとして使うレタスをひと口サイズにちぎるなど、すぐにできる簡単な業務から任せましょう。ホールスタッフの場合も皿洗いや店内清掃といった業務から始めると良いです。
例えばお客様がお店を選ぶ際、トイレの綺麗さを考慮して決めるといった方も一定層いるため、新人教育の入り口としてトイレ掃除をレクチャーすることで、お店全体の顧客満足度を高めることができます。また、トイレ掃除をした後に記名するフローにすることで新人スタッフの責任感も生まれ、達成感を得やすくなります。しかし、スタッフの中には清潔感のない掃除用具、特にトイレまわりの用具には触りたくないといった人もいるかもしれません。特に衛生面が気になるトイレの清掃用具は、消臭・抗菌加工がされており、定期的に交換されるレンタルモップを活用するなどの工夫をすると、手軽に働きやすい環境づくりができます。
例えばダスキンの「化粧室・トイレ用モップ」であればモップ使用後の水洗いが不要で、通気性のよい場所に吊るしておくだけという手軽さです。最近ではトイレ清掃に特化したスプレータイプのマルチクリーナーなども出ており、これらとセットで使えば面倒な準備・水洗い・二度拭きも不要になり、より清掃時間が短縮できます。
■ 新人育成の際にするべきおすすめの取り組み
続いて、新人育成を行う際におすすめの取り組みを具体的にご紹介します。
まず、短期間で新人を育成できる最大のツールとして「マニュアル」の作成をおすすめします。業務マニュアルを作成しておけばレクチャーする既存スタッフの負担を軽減できるうえに、スタッフ間での指導内容の食い違いも防げます。
その際マニュアルには、ただ文字を並べるだけでなく画像を付けることで理解度が高まります。特に外国人を雇用している店舗は言語の壁もあることでしょう。視覚から得る情報は忘れにくいものです。さらにマニュアルを動画化すると、一連の流れをレクチャーしやすいです。加えて、マニュアルを渡すだけでなく、いつでも確認できる状態を作ることも大切です。具体的には常にスタッフルームにマニュアルを置いておくなどが挙げられます。もしもスタッフ用のLINEアカウントがあるのであれば、設定でリッチメニューを付けておき、そこからアクセスすることでマニュアルに遷移できるようにするなどの方法もあります。
また、マニュアルと合わせて用意したいツールとして「チェックリスト」があります。チェックリストでは、新人育成の際にレクチャーをする一通りの業務をリスト化し、レクチャーを終えたらチェックボックスにチェックをします。このリストを用意することで、指示するスタッフが毎回変わってもどこまで教えたかがわかり、共有の漏れがなくなります。なお、チェックリストの項目の隣に優先度を記載しておくと、さらに効率よく指導ができます。このようなツールを用意することで、習得するべき業務とレクチャーの進捗状況を可視化しましょう。
ツールを準備するだけでなく、それを用いてレクチャーする指導者の育成も重要です。
一般的には店長が担当することもあるかと思いますが、店舗内のスタッフで、ある程度の経験がある方をトレーナーとして認定することで、店長の負担を軽減することができます。あわせてトレーナー認定時には時給がアップするなどのメリットを設けると、指導するスタッフ自身のモチベーションアップに繋がります。
トレーナーだけでなく、新人スタッフにおいても挑戦しやすい時給アップ施策を設けることで早期辞職を防ぐことができます。中には研修期間中に辞めてしまうというケースも多いため、研修期間が終わった段階で時給がアップするような取り組みをしている店舗もあります。
続いて、新人育成を行う際におすすめの取り組みを具体的にご紹介します。
まず、短期間で新人を育成できる最大のツールとして「マニュアル」の作成をおすすめします。業務マニュアルを作成しておけばレクチャーする既存スタッフの負担を軽減できるうえに、スタッフ間での指導内容の食い違いも防げます。
その際マニュアルには、ただ文字を並べるだけでなく画像を付けることで理解度が高まります。特に外国人を雇用している店舗は言語の壁もあることでしょう。視覚から得る情報は忘れにくいものです。さらにマニュアルを動画化すると、一連の流れをレクチャーしやすいです。加えて、マニュアルを渡すだけでなく、いつでも確認できる状態を作ることも大切です。具体的には常にスタッフルームにマニュアルを置いておくなどが挙げられます。もしもスタッフ用のLINEアカウントがあるのであれば、設定でリッチメニューを付けておき、そこからアクセスすることでマニュアルに遷移できるようにするなどの方法もあります。
また、マニュアルと合わせて用意したいツールとして「チェックリスト」があります。チェックリストでは、新人育成の際にレクチャーをする一通りの業務をリスト化し、レクチャーを終えたらチェックボックスにチェックをします。このリストを用意することで、指示するスタッフが毎回変わってもどこまで教えたかがわかり、共有の漏れがなくなります。なお、チェックリストの項目の隣に優先度を記載しておくと、さらに効率よく指導ができます。このようなツールを用意することで、習得するべき業務とレクチャーの進捗状況を可視化しましょう。
ツールを準備するだけでなく、それを用いてレクチャーする指導者の育成も重要です。
一般的には店長が担当することもあるかと思いますが、店舗内のスタッフで、ある程度の経験がある方をトレーナーとして認定することで、店長の負担を軽減することができます。あわせてトレーナー認定時には時給がアップするなどのメリットを設けると、指導するスタッフ自身のモチベーションアップに繋がります。
トレーナーだけでなく、新人スタッフにおいても挑戦しやすい時給アップ施策を設けることで早期辞職を防ぐことができます。中には研修期間中に辞めてしまうというケースも多いため、研修期間が終わった段階で時給がアップするような取り組みをしている店舗もあります。
■ AIを活用した新人教育
ここまで、新人育成の重要性と育成するためのポイント・実施したい項目をお伝えしてきました。とはいえ店舗を経営しながらの新人教育は時間もコストもかかります。新人の早期育成と定着が重要視されるなか、人工知能(AI)技術は、新人教育のあり方を根底から変革する可能性を秘めています。AIは、大量のデータを解析し、リアルタイムでのフィードバック、そして育成担当者の負担軽減といった多岐にわたるメリットをもたらします。
ここからは、AIを活用した新人教育の具体的な方法とその効果について深く掘り下げ、早期戦力化と定着率向上を実現するための道筋を探ります。
〈AIチャットボットによる質問対応〉
新人は、新しい環境に身を置く中で、業務の手順、専門知識、社内ルール、あるいはちょっとした疑問に至るまで、多岐にわたる質問を抱えるものです。しかしながら、日々の業務に追われる育成担当者にとって、これらの質問に都度丁寧に対応することは時間的にも精神的にも大きな負担となる場合があります。また、新人側も、「今、質問しても大丈夫だろうか」「忙しい先輩の時間を割いてしまうのではないか」といった心理的なハードルにより、結果として疑問を解消できずに業務が滞ったり、不安を抱えたまま学習が進まなかったりする可能性があります。
このような状況を打破し、新人がよりスムーズに業務に適応し、効率的に学習を進めるための有効な手段としてAIチャットボットの活用が注目されています。AIチャットボットは、まるで経験豊富な先輩社員が常に隣にいるかのように、新人の質問に対して24時間365日、即座に、そして的確に回答を提供します。時間や場所を選ばずに疑問を解消できる環境は新人の不安を軽減し、自律的な学習を促進します。
さらに、AIチャットボットの大きな利点として、質問と回答の履歴を学習し、FAQの精度を継続的に向上させることができる点が挙げられます。多くの新人が抱える共通の疑問とその解決策が蓄積されることで、より洗練された回答を提供できるようになり、結果として新人全体の疑問解消の効率化と質の向上に貢献します。
AIチャットボットの導入というと、高度なプログラミングスキルや複雑なプロンプト(AIの指示文章)の構築が必要になるイメージがあるかもしれませんが、実際は、すでに業務マニュアルやFAQといったテキストデータが整備されていれば、3分程度で手軽にAIチャットボットを構築することが可能です。
具体的な手順の一例として、Googleが提供する「NotebookLM」を活用する方法をご紹介します。NotebookLMは、アップロードされたドキュメントの内容を理解し、それに基づいて質問応答を行うことができるツールです。既存の業務マニュアルのPDFファイルやテキストデータをNotebookLMに読み込ませるだけで、AIはその内容を解析し、質問応答の知識ベースとして活用できるようになります。
新人が疑問を持った際にはNotebookLMのインターフェースに質問を入力するだけで、AIは関連性の高い回答を瞬時に生成し、表示します。さらに、回答の根拠となったマニュアル内の該当箇所や参考ページも同時に提示してくれるため、新人は回答の信頼性を確認したり、より詳細な情報を自分で調べることができます。
この手軽さこそが、NotebookLMをはじめとするAIツールの大きな魅力です。複雑なコードを一行も書く必要はなく、専門的な知識もほとんど求められません。既存のマニュアルを基礎に、短時間かつ低コストで強力な新人教育支援システムを構築することができるのです。
〈AIを活用したシミュレーション研修〉
従来の新人教育における評価とフィードバックは、主に育成担当者の主観や経験に基づいて行われることが多く、評価基準のばらつきやフィードバックの具体性の欠如といった課題がありました。また、多忙な育成担当者が一人ひとりの新人に十分な時間を割くことは現実的に難しい側面がありました。AIを活用した評価とフィードバックは、これらの課題を克服し、より客観的で、具体的かつタイムリーな情報を提供し、新人の成長を強力に後押しします。
AIは、研修の成果物、OJTの進捗データ、業務遂行のログなど、多岐にわたる情報を定量的に分析し、人間の目では見落としがちな傾向やパターンを抽出することができます。これにより、新人の強みと弱みを明確に可視化し、個々のニーズに合わせた、より効果的なフィードバックが可能になります。
例えば、営業職や飲食店の接客における新人研修のロールプレイングにおいて、AIは、新人のロールプレイングを録画・録音したデータや、テキストによる対話履歴などを分析し、それを見本となる社員の録音データ、テキストデータ、分析したい項目を予め記載した指示文と比較・検証することで、以下のような要素を評価することができます。
▼顧客理解 (Customer Understanding)
顧客のニーズや課題を的確に把握できているか、適切な質問ができているかなどを、対話の内容やキーワードの出現頻度などから分析します。
▼提案力 (Proposal Skills)
顧客のニーズに合致した提案ができているか、メニューの特徴を効果的に伝えられているかなどを評価します。
▼クロージングスキル (Closing Skills)
購買意欲を高めるための適切なタイミングでのクロージング(セット割の紹介など)、顧客の懸念点の解消(持ち歩き可能時間の提示など)、次のステップへの移行(クーポン・イベント・ポイントカードの紹介など)のスムーズさを評価します。
▼製品知識 (Product Knowledge)
メニュー・サービスに関する正確かつ十分な知識を持っているか、顧客の質問に対して的確に回答できているかなどを評価します。
AIは、これらの評価項目に基づいて、具体的なフィードバックを新人に提供します。例えば、「〇〇の注文の聞き方は丁寧でわかりやすかったです」「〇〇の料理を提供する際、一言添えることで、顧客満足度を高めることができます」「〇〇のクレームに対して、冷静に対応できていました。しかし、お客様の気持ちに寄り添う言葉をもう少し加えると、より良い対応になります」といった具体的な指摘は、新人が自身の課題を明確に認識し、改善に向けた具体的な行動を取りやすくなります。
また、AIは「〇〇の説明は、顧客のニーズと合致しており、とてもわかりやすかったです」といった具体的な強みを伝えることで、新人の自信を育み、さらなる成長を促します。
さらに、AIは新人の習熟度に合わせてシナリオの難易度を調整することも可能です。基本的な対応に慣れてきた新人には、より複雑な状況やイレギュラーなケース(アレルギー対応、特別な要望など)のシナリオを提供することで、応用力を養うことができます。
従来のOJTやロールプレイングといった実践的な研修は実際の業務環境で行われるため、ミスが許されない場面や、新人がプレッシャーを感じやすいという側面がありました。また、多様な状況を経験するためには時間と機会が必要となるため、効率的なスキル習得が難しいという課題もありました。
AIを活用したシミュレーション研修は、これらの課題を解決し、新人が実際の業務に近い仮想環境で、リスクを恐れることなく、様々な状況に対応する練習を繰り返し行うことを可能にします。
今回は、効果的に人材育成を行う方法①~新人育成編~と題し、新人育成について効果的な手法をお伝えしました。「マニュアルやチェックリストなどのツールの拡充をする」「教える側となるスタッフの育成体制を構築する」「時給アップの施策を検討する」など、どれもすぐに取り組めるものです。また、後半ではAIを活用したチャットボットの構築、シミュレーション研修をご紹介しました。AI技術の導入は、確かに一朝一夕にはいかないかもしれません。未知の領域に足を踏み入れることに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、AIがもたらす可能性は、新人の育成力アップに加え、業務効率化、顧客体験の向上、そして新たな価値創造へと繋がる力強い推進力となるはずです。
働く環境を整えて新人スタッフの育成スピードを上げるとともに、定着率も上げていきましょう。
ここまで、新人育成の重要性と育成するためのポイント・実施したい項目をお伝えしてきました。とはいえ店舗を経営しながらの新人教育は時間もコストもかかります。新人の早期育成と定着が重要視されるなか、人工知能(AI)技術は、新人教育のあり方を根底から変革する可能性を秘めています。AIは、大量のデータを解析し、リアルタイムでのフィードバック、そして育成担当者の負担軽減といった多岐にわたるメリットをもたらします。
ここからは、AIを活用した新人教育の具体的な方法とその効果について深く掘り下げ、早期戦力化と定着率向上を実現するための道筋を探ります。
〈AIチャットボットによる質問対応〉
新人は、新しい環境に身を置く中で、業務の手順、専門知識、社内ルール、あるいはちょっとした疑問に至るまで、多岐にわたる質問を抱えるものです。しかしながら、日々の業務に追われる育成担当者にとって、これらの質問に都度丁寧に対応することは時間的にも精神的にも大きな負担となる場合があります。また、新人側も、「今、質問しても大丈夫だろうか」「忙しい先輩の時間を割いてしまうのではないか」といった心理的なハードルにより、結果として疑問を解消できずに業務が滞ったり、不安を抱えたまま学習が進まなかったりする可能性があります。
このような状況を打破し、新人がよりスムーズに業務に適応し、効率的に学習を進めるための有効な手段としてAIチャットボットの活用が注目されています。AIチャットボットは、まるで経験豊富な先輩社員が常に隣にいるかのように、新人の質問に対して24時間365日、即座に、そして的確に回答を提供します。時間や場所を選ばずに疑問を解消できる環境は新人の不安を軽減し、自律的な学習を促進します。
さらに、AIチャットボットの大きな利点として、質問と回答の履歴を学習し、FAQの精度を継続的に向上させることができる点が挙げられます。多くの新人が抱える共通の疑問とその解決策が蓄積されることで、より洗練された回答を提供できるようになり、結果として新人全体の疑問解消の効率化と質の向上に貢献します。
AIチャットボットの導入というと、高度なプログラミングスキルや複雑なプロンプト(AIの指示文章)の構築が必要になるイメージがあるかもしれませんが、実際は、すでに業務マニュアルやFAQといったテキストデータが整備されていれば、3分程度で手軽にAIチャットボットを構築することが可能です。
具体的な手順の一例として、Googleが提供する「NotebookLM」を活用する方法をご紹介します。NotebookLMは、アップロードされたドキュメントの内容を理解し、それに基づいて質問応答を行うことができるツールです。既存の業務マニュアルのPDFファイルやテキストデータをNotebookLMに読み込ませるだけで、AIはその内容を解析し、質問応答の知識ベースとして活用できるようになります。
新人が疑問を持った際にはNotebookLMのインターフェースに質問を入力するだけで、AIは関連性の高い回答を瞬時に生成し、表示します。さらに、回答の根拠となったマニュアル内の該当箇所や参考ページも同時に提示してくれるため、新人は回答の信頼性を確認したり、より詳細な情報を自分で調べることができます。
この手軽さこそが、NotebookLMをはじめとするAIツールの大きな魅力です。複雑なコードを一行も書く必要はなく、専門的な知識もほとんど求められません。既存のマニュアルを基礎に、短時間かつ低コストで強力な新人教育支援システムを構築することができるのです。
〈AIを活用したシミュレーション研修〉
従来の新人教育における評価とフィードバックは、主に育成担当者の主観や経験に基づいて行われることが多く、評価基準のばらつきやフィードバックの具体性の欠如といった課題がありました。また、多忙な育成担当者が一人ひとりの新人に十分な時間を割くことは現実的に難しい側面がありました。AIを活用した評価とフィードバックは、これらの課題を克服し、より客観的で、具体的かつタイムリーな情報を提供し、新人の成長を強力に後押しします。
AIは、研修の成果物、OJTの進捗データ、業務遂行のログなど、多岐にわたる情報を定量的に分析し、人間の目では見落としがちな傾向やパターンを抽出することができます。これにより、新人の強みと弱みを明確に可視化し、個々のニーズに合わせた、より効果的なフィードバックが可能になります。
例えば、営業職や飲食店の接客における新人研修のロールプレイングにおいて、AIは、新人のロールプレイングを録画・録音したデータや、テキストによる対話履歴などを分析し、それを見本となる社員の録音データ、テキストデータ、分析したい項目を予め記載した指示文と比較・検証することで、以下のような要素を評価することができます。
▼顧客理解 (Customer Understanding)
顧客のニーズや課題を的確に把握できているか、適切な質問ができているかなどを、対話の内容やキーワードの出現頻度などから分析します。
▼提案力 (Proposal Skills)
顧客のニーズに合致した提案ができているか、メニューの特徴を効果的に伝えられているかなどを評価します。
▼クロージングスキル (Closing Skills)
購買意欲を高めるための適切なタイミングでのクロージング(セット割の紹介など)、顧客の懸念点の解消(持ち歩き可能時間の提示など)、次のステップへの移行(クーポン・イベント・ポイントカードの紹介など)のスムーズさを評価します。
▼製品知識 (Product Knowledge)
メニュー・サービスに関する正確かつ十分な知識を持っているか、顧客の質問に対して的確に回答できているかなどを評価します。
AIは、これらの評価項目に基づいて、具体的なフィードバックを新人に提供します。例えば、「〇〇の注文の聞き方は丁寧でわかりやすかったです」「〇〇の料理を提供する際、一言添えることで、顧客満足度を高めることができます」「〇〇のクレームに対して、冷静に対応できていました。しかし、お客様の気持ちに寄り添う言葉をもう少し加えると、より良い対応になります」といった具体的な指摘は、新人が自身の課題を明確に認識し、改善に向けた具体的な行動を取りやすくなります。
また、AIは「〇〇の説明は、顧客のニーズと合致しており、とてもわかりやすかったです」といった具体的な強みを伝えることで、新人の自信を育み、さらなる成長を促します。
さらに、AIは新人の習熟度に合わせてシナリオの難易度を調整することも可能です。基本的な対応に慣れてきた新人には、より複雑な状況やイレギュラーなケース(アレルギー対応、特別な要望など)のシナリオを提供することで、応用力を養うことができます。
従来のOJTやロールプレイングといった実践的な研修は実際の業務環境で行われるため、ミスが許されない場面や、新人がプレッシャーを感じやすいという側面がありました。また、多様な状況を経験するためには時間と機会が必要となるため、効率的なスキル習得が難しいという課題もありました。
AIを活用したシミュレーション研修は、これらの課題を解決し、新人が実際の業務に近い仮想環境で、リスクを恐れることなく、様々な状況に対応する練習を繰り返し行うことを可能にします。
今回は、効果的に人材育成を行う方法①~新人育成編~と題し、新人育成について効果的な手法をお伝えしました。「マニュアルやチェックリストなどのツールの拡充をする」「教える側となるスタッフの育成体制を構築する」「時給アップの施策を検討する」など、どれもすぐに取り組めるものです。また、後半ではAIを活用したチャットボットの構築、シミュレーション研修をご紹介しました。AI技術の導入は、確かに一朝一夕にはいかないかもしれません。未知の領域に足を踏み入れることに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、AIがもたらす可能性は、新人の育成力アップに加え、業務効率化、顧客体験の向上、そして新たな価値創造へと繋がる力強い推進力となるはずです。
働く環境を整えて新人スタッフの育成スピードを上げるとともに、定着率も上げていきましょう。
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(公開日 2025年6月27日)